1.精密板金と素材、板厚
精密板金の明確な定義はありませんが、一般的には、用金型を使用せず汎用金型や治具を使用して加工する多品種少量/中量の板金加工方法です。素材は鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮などの金属板が多く板厚も最大3mmと薄いのが特長です。寸法公差に関しては、曲げ加工では0.1mm~0.2mmといった厳しい公差が求められます。
当社では、ステンレスで0.01mm~という薄い金属板を加工するため、溶接も治具製作が不可欠です。お客さまが必要とする機能の要点を理解し、作業性を考えて設計を行います。
特に絞りなど複雑形状の場合、いただいたデータそのままでは実現できない場合もあります。「図面より先を考える」・・・それが、私たちの仕事のスタンスです。
クラッド材(複合材料)など市場に出回っていない金属素材においてもご依頼いただければ、板金・溶接のテストを承ります。当社では過去にクラッド材の溶接を行った実績がございます。通常の金属とは作業感覚が異なり苦戦しましたが、設計者の方と相談しなが二人三脚で進めさせていただきました。
精密板金の代表的な加工素材
素材名称 | 特長 |
鋼 | 耐腐食性、強度があり幅広い用途で使われている。素材自体のコストは低いが、重いため輸送コストがかかる。 |
銅 | 耐食性、電気伝導性、熱伝導性に優れている。軟らかいため強度を求める用途には不向き。 |
アルミニウム | 金属の中でも軽量の部類に入り輸送コストが低い。弾力性があるので複雑な形状に打ち抜く加工に向いている。 |
特殊金属 | ニッケルやチタンなど、極端な環境にも耐えることができるよう配合された金属。一般的に加工は難しいとされている。 |
2.材料の塑性と求められる形状
塑性加工とは、金属が持つ、一定の力をかけ変形させると元に戻らないという性質を利用した加工方法です。精密板金では、主に曲げ、せん断、絞りの工程で塑性を利用して加工を行います。
3. 溶接の材料と組み合わせ
溶接の容易さ
一般的に、ステンレスは溶接がしやすく、アルミや銅は溶接がしにくいと言われていますが、当社では素材問わず溶接可能です。素材によって溶接時の歪が変わってくるため、その点を考慮して溶接を行います。
異種素材の溶接
同素材の溶接がほとんどですが、異素材同士の溶接も可能です。(ただし銅と真鍮の溶接など難しいケースもございます。)
溶接が必要な場合と、必要でない場合
溶接が含まれる精密板金加工では、最初から歪みを考慮して加工工程や曲げを行います。精密板金加工は、レーザー、曲げ、溶接、ワイヤーカットなどの複合技術で成り立ち、また、ベンダー型も案件によってはオリジナルで製作する必要があります。最終品質を目指して、さまざまな素材の特性を理解する必要がありますが、特に溶接を含む案件でシビアな精度を実現するためには、溶接技術のみならず「溶接のためのベンダー」のように技術の横連携が求められます。